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2003年09月12日ログ。   

●2003/9/12

 高校の時、「格技」という科目名で柔道の授業が週1回あった。

 普通の高校生にとって、柔道なんてつまらない。はりきってるのは柔道部員だけ。ほとんどの生徒が適当にこなす科目だった。でも、2度だけ全員が真剣に取り組んだことがある。

 1度目は2年生の時だったと思う。その日、柔道を教えるH先生が深刻な顔で格技場に現れた。

 全員正座で先生と正対し、礼。何か重たいムードを察知して静まりかえる格技場に、H先生の声が響く。

「実は今朝の授業でな、騒いでる奴が居たもんだから、ちょっと殴ったんだが」

 スタートから怖い。先生が続ける。

「当たったところが悪くて…歯が折れちまったんだ。しかも4本。それでちょっと問題になってな。さっき親御さんが学校に来てな。もしかしたら教師やめることになるかもしれん。」

 重い空気。

「しょうがねぇな…もう一人くらい殴ってから辞めるか!ハハハハハ!」

 空気を読めないボンクラの数人が一緒になってアハハハ、と少し笑ったが、場の空気に押しつぶされて、すぐに黙った。この日の授業は、みんな真剣だったと思う。恐くて私語なんて一切なかった。その学期の終業式では、H先生が山の中にある宿泊研修を行う施設に赴任することが発表された。理由は発表されなかったが、みんな知っていた。

 

 2度目に授業を真剣に受けたのは、3年生の時。

 この年に格技の授業を受け持っていたのはS先生。彼は柔道部出身で、青春を柔道に捧げた人らしい。そのS先生がある日の授業で受け身の練習中に、こう言った。

「お前ら、受け身の練習だけはキチンとやっておけよ!俺の先輩でも、受け身に失敗してダランとなった人、いっぱい居るからな!」

 ダランとなった、という言葉が面白かったので意味もわからず笑っていたら。

「お前ら、ダランとなったらイヤだろ!チンコだぞ!一生だぞ!」

 これは効いた。ダランとなるって、そこかよ。イヤだ。それだけはイヤだ。格技場が、それまでとは違った雰囲気に包まれる。ビシッ!バシッ!と鋭く畳を叩く音だけが響き渡る。全員真顔。

 この時は、かなり真剣だった。しかし授業の後になって考えてみたら、受け身に失敗してダランとなるメカニズムが誰にもわからなかったので、この話は忘れ去られていった。もしかしたらこれも「先生に聞かされたウソ話」の類かもしれない。

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 世界柔道が始まった。頑張れ加藤晴彦。泣くところ、たぶん無いぞ。

 



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