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2003年06月29日ログ。   

●2003/6/29

 札幌に居ると、有名人を見掛ける事なんてほとんど無い。

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 高校の修学旅行の時、東京で丸一日自由行動の日があったので、ベタだなとは思いながら仲間と一緒に皇居に行った。芝生にあった「この芝生には入らないでください」という立て看板に、「間違って一歩でも踏み入れようものなら即座にあちらこちらから黒ずくめの屈強な男達が飛んでくるに違いない」とビクビク怯えながらグルっと一回りして、さあ帰ろうと有楽町の駅へと戻る途中にニッポン放送のビルがあった。すごいなぁ、芸能人とかも来るんだろうなぁと、田舎者丸出しでその玄関をバックに記念撮影をしていたところ、仲間の一人がボソっとつぶやいた。

 「あ、峰竜太だ」

 後ろを振り返ると、ビルの中から見慣れた顔がこちらへ向かってきた。本当だ、峰竜太だ。アッコにおまかせで、まかせてる人だ。すげぇ。本物だ。

 受付の女性に丁寧に頭を下げ、俺の横を通り抜け有楽町の街へ消えていく峰竜太。今の俺なら「すみません、竜雷太さんですよね」とジャブのひとつも投げかけるところであるが、初めて芸能人を見て舞い上がっている札幌の高校生にそんな機転など望むべくもない。胸の高鳴りを抑えながら峰竜太の後頭部を見送るのが精一杯であった。

 夕方になり集合場所の上野駅に戻ると、早速みんなに「峰竜太を見た」という自慢話を存分にした。見たのが峰竜太という点であまり羨望を得られなかったが、思ったより小さかったよ、腰の低い人だったよ、一瞬だけど目が合ったよ、と一通りの説明を終え優越感に浸っていると、それを聞いていた友人のひとりがため息混じりに口を開いた。

 「いいなぁ、せっかく東京に来たのに俺なんか稲川淳二のそっくりさんショーを見掛けただけだった」

 負けた、と思った。本物の稲川淳二であれば峰竜太と大差無い。めでたくもありめでたくもなし感はタイであると言える。しかし、そっくりさんって何だ。そっくりの対象が稲川淳二ってどうなんだ。しかもそいつがショーをやってるだなんて、そんなことが許されるのか。1000万都市はそこまで間口が広いのか。札幌では絶対に見ることができないものを彼は見たのではないか。

 アハハハハ、そっくりさんかよ、そりゃダメだ、と誰もがそのショボさに爆笑していたので俺も一応笑っておいたが、胸の内はモヤモヤしたものが渦巻いていた。

 試合に勝って勝負に負けることもある。思わぬ事を学んだ修学旅行だった。

 



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